世界のプロポーズ

ロシアの花嫁の「身代金」――愛を試す、笑顔のプロポーズ儀式

ロシアの結婚式には、花婿が花嫁の家へ迎えに行く前に立ちはだかる、少しユーモラスでロマンティックな習慣があります。それが「ヴィクプ・ネヴェスティ」と呼ばれる、いわゆる花嫁の“身代金”の儀式です。

本当の身代金ではなく、愛を見せるための遊び

「身代金」と聞くと少し物々しく感じますが、現代のロシアでは、花嫁を買うという意味ではありません。花嫁の友人や家族が花婿に楽しい課題を出し、花婿がそれを乗り越えて花嫁のもとへたどり着く、結婚式前の明るい余興です。たとえば、花嫁の好きな食べ物を答える。二人の記念日を当てる。花嫁への愛の言葉を大きな声で伝える。時には歌を歌ったり、ダンスをしたり、小さなお金やお菓子を渡したりすることもあります。

花婿を待ち受ける、愛の関門

この儀式で大切なのは、正解することよりも、花婿がどれだけ一生懸命に花嫁を想っているかです。照れながら愛を語る姿。間違えてみんなに笑われる姿。それでも花嫁に会うために、ひとつずつ関門を越えていく姿。そのすべてが、結婚式の朝をあたたかく彩ります。

家族と友人が見守るプロポーズの続き

ロシアの「身代金」は、プロポーズの後に行われる、もうひとつの愛の証明とも言えます。「彼女を幸せにします」と言葉で誓った花婿が、今度は行動でその気持ちを見せるのです。花嫁の家の扉は、ただの入口ではありません。そこは、恋人から夫へと進むための小さな舞台。そして花婿は、笑いと拍手の中で、愛する人のもとへ歩いていきます。

現代では行わないカップルも

現在のロシアでは、この儀式を盛大に行う人もいれば、簡略化したり、まったく行わなかったりするカップルもいます。けれど、形が変わっても残っているのは、花嫁を大切に思う気持ちを、家族や友人の前で表すという美しい心です。プロポーズは「結婚してください」と伝える瞬間。そしてロシアの花嫁の“身代金”は、その言葉をもう一度、笑顔で証明する時間なのです。