給料3ヶ月分は広告だった?ダイヤモンドがプロポーズの定番になった裏側
プロポーズでダイヤモンドの指輪を贈る。多くの人が当たり前に思うこの風習ですが、実は「100年も前のものではない」という事実を知っていますか?
「婚約指輪は給料の3ヶ月分」という言葉も、ある企業のマーケティング戦略から生まれたものでした。
ダイヤモンドはもともと「特別な石」ではなかった
プロポーズの歴史を遡ると、ダイヤモンドが必ずしも定番ではありませんでした。
1477年、オーストリアのマクシミリアン大公がブルゴーニュ公女マリーにダイヤモンドの指輪を贈ったのが記録に残る最初の例と言われています。
しかし、これは王侯貴族の特別な話でした。一般の人々の間では、婚約指輪にはルビーやサファイアなど、さまざまな宝石が使われていました。
デビアス社が仕掛けた「永遠の愛」の物語
状況を変えたのは、南アフリカで巨大なダイヤモンド鉱山を発見したデビアス社でした。
大量のダイヤモンドが採掘されるようになると価格が下落し、需要も低迷。
そこでデビアス社は1938年、大規模なキャンペーンを開始しました。1947年には「A Diamond is Forever」というキャッチコピーが誕生し、ハリウッド女優にダイヤモンドを身につけさせ、ダイヤモンドが「ロマンスの代名詞」であるかのように見せかけたのです。
「給料の3ヶ月分」は、日本の結納文化から生まれた
デビアス社の戦略の核心が「給料の3ヶ月分」という価格基準です。
アメリカでは「給料2ヶ月分」が提唱されましたが、日本ではなぜ「3ヶ月分」になったのでしょうか。
実は、デビアス社は日本の「結納」の文化に着目しました。1970年代、日本では新郎から新婦へ「結納金」が渡されるのが一般的で、その相場が新郎の給料の2〜3ヶ月分だったのです。
デビアス社はこの慣習に目をつけ、「婚約指輪は給料の3ヶ月分」というガイドラインを設定しました。
さらに決定打となったのが、人気歌手・郷ひろみが婚約時に「給料の3ヶ月分です」と答えたこと。
この一言で、多くの人の心に「婚約指輪=給料3ヶ月分」というイメージが定着したと言われています。
「慣習」の裏にある、巧みな心理戦略
「給料の3ヶ月分」が定着した理由の一つは、「わかりやすい価格」だったことです。
冠婚葬祭ではいくらが相場か分からないことが多い。そこに「給料の3ヶ月分」という明確な数字を示すことで、消費者は安心して購入できました。
また、デビアス社はダイヤモンドを「永遠の愛の証」として位置づけ、転売を促さないよう「家宝として大切にしましょう」と訴えました。
これにより中古市場が形成されず、新しいダイヤモンドの需要が常に維持されたのです。
ダイヤモンドがプロポーズの定番になったのは、美しさや希少性だけではありません。
デビアス社の長年にわたるマーケティング戦略が、私たちの「当たり前」を作り上げたのです。
「給料の3ヶ月分」は、企業の広告メッセージがいかに「常識」に変わるかを示す象徴的な例です。
プロポーズを考える際、その歴史を知った上で、二人にとって本当に大切なものを選んでほしいと思います。
